苦味に対する感受性が遺伝的に高い人のことを「スーパーテイスター」と呼びます。アメリカ・ルイジアナ州の医師による研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査を受けた患者およそ2000人のデータから、スーパーテイスターはCOVID-19に感染するリスクが低い可能性を指摘しています。
Association Between Bitter Taste Receptor Phenotype and Scientific Results Among Individuals With COVID-19 | Infectious Disorders | JAMA Community Open | JAMA Community
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2780134
Bizarre Discovery Demonstrates ‘Supertasters’ Could Be Improved at Battling Off SARS-CoV-2
https://www.sciencealert.com/bizarre-discovery-displays-supertasters-could-be-better-at-battling-off-sars-cov-2
「スーパーテイスター」は苦味受容体遺伝子であるTAS2R38に関連する性質で、苦味成分であるフェニルチオカルバミドやプロピルチオウラシルをより鋭敏に感じ取ることができます。スーパーテイスターは苦味に限らず味覚が鋭敏であるため、一部の食材をどうしても受け付けられず、選択的摂食障害を患うこともあります。
ルイジアナ州のヘンリー・バーナム医師の率いる研究チームは、COVID-19の特徴的な症状である「味覚・嗅覚の喪失」について調査していたところ、COVID-19感染検査で陽性と診断された人の中にスーパーテイスターが1人もいなかったことに気づきました。
そこで研究チームは、2020年7月1日から9月30日までの間にPCR検査を受けた1935人を対象に、フェニルチオカルバミド・チオ尿素・安息香酸ナトリウムで処理されたリトマス試験紙を使い、味覚テストを行いました。その結果、1935人のうち508人(26.3%)が味覚の鋭敏な「スーパーテイスター」、917人(47.4%)が一般的な味覚を持つ「テイスター」、510人(26.4%)が味覚の鈍い「ノンテイスター」に分類されました。
研究チームが被験者らのPCR検査の結果を分析したところ、陽性と診断されたのは1935人中266人で、そのうち104人がテイスター、147人がノンテイスターで、スーパーテイスターはわずか15人でした。PCR検査を受けた患者全体のおよそ4分の1を占めていたスーパーテイスターが、陽性と診断された患者にはわずか5.6%しかいなかったことから、研究チームはスーパーテイスターがCOVID-19に感染しにくい可能性を指摘しています。
さらに、陽性患者266人中55人が入院を余儀なくされ、そのうち47人がノンテイスターだったことがわかりました。このことから、TAS2R38に起因する味覚の違いとCOVID-19の重症化リスクが関連していると研究チームは主張しています。なお、入院した患者55人で「味を感じなくなった」と訴える患者はおらず、半数が「匂いを感じなくなった」と報告したとのこと。
研究チームは苦味受容体遺伝子の活性化が免疫反応と関係があるのではないかと推察していますが、新型コロナウイルス自体がまだはっきりとよくわかっていない部分が多いこともあり、苦味受容体遺伝子が免疫反応に影響を与える具体的なメカニズムははっきりしていません。
研究チームは「苦味受容体は、自然免疫に重要な役割を果たしているようです。この発見は新型コロナウイルスへの理解に加えて、インフルエンザを含む他のウイルスによる毎年の感染を理解する上で大きな意味を持つ可能性があります」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1i_yk
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