タコは無脊椎動物でありながら非常に発達した神経系を持っており、高い知能を持っていることが知られています。そんなタコの睡眠サイクルを研究したところ、タコも人間と似たような睡眠サイクルを持っていることが判明し、寝ている間に「夢」を見ている可能性もあると研究者が報告しました。
Cyclic alternation of quiet and active slumber states in the octopus: iScience
https://www.mobile.com/iscience/fulltext/S2589-0042(21)00191-7
Octopuses have two alternating sleep states, examine demonstrates | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-03/cp-oht031821.php
Do octopuses aspiration of 8-armed sheep? New analyze hints at human-like sleep cycle in cephalopods | Live Science
https://www.livescience.com/octopus-sleep-cycle.html
We Have The Initially-At any time Confirmation of Alternating Rest States in an Octopus
https://www.sciencealert.com/the-shifting-hues-of-sleeping-octopuses-indicate-a-2nd-snooze-condition
タコは全身にある特殊な色素細胞が膨張や収縮を行うことで体色を変化させることができ、起きている間は周囲の環境に合わせて体色を変えています。一方、タコが海底で眠る時は体色が白っぽくなりますが、「静かな睡眠」と「活発な睡眠」を繰り返していて、時々もぞもぞと動き、体色を活発に変化させることも知られています。
タコが経験する「静かな睡眠」と「活発な睡眠」の様子は、以下のムービーを見るとよくわかります。
The two unique slumber states of an octopus – YouTube
https://www.youtube.com/check out?v=L324xk38zx4
静かな睡眠をしている時のタコは全身が白っぽくなっており、瞳孔も収縮しています。
頭や腕がゆっくり動くことはあるものの、ほぼ静止状態であるといえます。
一方、活発な睡眠をしているとされるタコを見てみると……
体色が頻繁に変わるだけでなく、全身がピクピクと動いています。
明らかに静かな睡眠とは様子が違い、瞳孔が開くこともあるとのこと。
以前からタコが2つの睡眠状態を持っていることは知られていたものの、活発な睡眠といわれる状態が本当に寝ているのか、それとも一時的に目が覚めた「静かな覚醒状態」であるのかは不明でした。そこで研究チームは、2つの状態にあるタコが刺激に反応するまでの時間を調べ、「覚醒閾値(いきち)」を測定する実験を行いました。
研究チームはブラジルに生息するOctopus insularisと呼ばれるタコを4匹用いて、静かな睡眠・活発な睡眠・普通に覚醒して水槽内を探索している状態で、それぞれ水槽を振動させたりガラスの外側で餌となるカニの映像を再生したりしました。もし、活発な睡眠と呼ばれる状態のタコが目覚めているのであればこれらの刺激に素早く反応するはずですが、活発な睡眠時のタコは明らかに覚醒した状態より反応が遅いことが判明し、活発な睡眠時のタコは実際に眠っていることが確認されたとのこと。
タコは静かな睡眠を数分~30分ほど続けると活発な睡眠に移行しますが、活発な睡眠は数十秒~1分強の短い時間しか見られず、その後でタコは再び静かな睡眠に移行します。タコはおよそ30分~40分に1回ほどの間隔で活発な睡眠に移行しており、人間や鳥、は虫類と同じく予測可能な睡眠サイクルを持っていると研究チームは指摘。
論文の筆頭著者であり、リオグランデ・ド・ノルテ国立大学の大学院生であるSylvia Medeiros氏は、「タコが夢を見ていると断言することはできませんが、私たちの結果は活発な睡眠の後にタコがレム睡眠に似た状態を経験する可能性があることを示唆しています」とコメント。人間はレム睡眠中に夢を見ることがわかっていますが、タコの活発な睡眠は非常に短いため、夢を見るとしても長いストーリーがあるものではなく、短いビデオクリップのようなものだと考えられています。
人間などの哺乳類では、レム睡眠が脳内の短期記憶を長期記憶に変換するために役立つ生理学的変化を引き起こしていますが、タコでも同様に活発な睡眠が記憶の定着に関与しているかどうかは不明です。研究チームは今後、タコの睡眠サイクルの変化が新たなタスクを学習する能力に及ぼす影響や、活発な睡眠中に現れる遺伝子発現やタンパク質の構築について研究することを計画しているとのこと。
Medeiros氏は、タコなどの頭足類が約5億年前に脊椎動物と分化したにもかかわらず、人間と似たような睡眠サイクルを持っている点は注目に値すると指摘。「静かな睡眠(ノンレム睡眠)と活発な睡眠(レム睡眠)という2つの異なる睡眠状態が脊椎動物と無脊椎動物で独立して進化した場合、この生理学的プロセスを形成する本質的な進化の圧力は何でしょう?」と述べ、複雑な集中神経系に共通する特性が、2つの睡眠状態の形成に反映されている可能性があると示唆しました。
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